2006年 07月 31日
少し前に貸金業におけるいわゆる上限金利問題に関するニュースについて採り上げましたが、これに関連してどうにも首をかしげざるをえない論文を読みました。しかもそれは天下の日経新聞の「経済教室」です。 私の母校の某教授が執筆していて、ちなみにこの先生、上限金利問題を議論する金融庁の「貸金業制度に関する有識者懇談会」の座長を務める方です。つまり国から認められたオピニオン・リーダーということになります。 記事によれば、この上限金利の問題はもっと全体像を見るべきであり、借り手・貸し手そして市場の三つの側面から様々な改善が求められ、場合によっては他国のようにノンバンクを免許制にし、参入を厳しくすることも視野に入れるべきだ、とのことです。色々反論はありますが、総論としては一見真っ当な意見のような印象を受けます。しかしその記事を読むと、実に驚くべき議論の展開がなされています。 この論文によれば、まずノンバンクにおける借り手は以下の3グループに分けられるそうです。逆にいえばこの3グループしか存在しないようです。 (以下原文まま) ①病気・勤務先の倒産なので生活費が足りなくなり、消費者金融から借り入れ、高金利で借金が雪だるま式に増え、多重債務に陥るグループ ②自分の収入以上に浪費したり、ギャンブルなどにお金を注ぎ込んで、生活費に困り消費者金融から借り入れをするグループ ③新たな事業始めようとしたものの、銀行からは資金が借りられず、ノンバンクから事業資金を借り入れ、事業がうまく軌道にのって高い利息も返済していくグループ このロジックでいうと、非事業性資金に限った(③を除く)いわゆる「消費者金融」の顧客は、生活苦か浪費家だけということになります。大手の消費者金融の顧客は優に200万人を超えますから、日本には随分と生活苦と浪費家がいるもんですね。。。 大学教授という立場では、まずもって消費者金融のお世話になることはないでしょうから、こういう浮世離れした結論に至ってしまうのでしょうか。普通に考えれば、生活苦と浪費家を相手にした貸金ビジネスが成り立たないことくらいは分かると思いますし、さらにいえばそんな会社が上場できるはずないでしょう。 もちろんこのような人たちも確かに存在するでしょう。しかしあくまで顧客の中心は銀行からは借りられない、かといって公的な資金に頼るほど困窮しているわけでもない低所得者層であり、彼らの一時的な出費をカバーするのが消費者金融であるわけです。旅行、英会話教室、仕事道具の購入、その資金使途は様々です。帰りのタクシー代を銀行のATMで降ろすと手数料がかかるから、一定期間金利のかからない商品を提供する消費者金融から借りる、なんてケースもありますし。誰でも一時的に収入を超える出費があるわけで(国でさえもそうなんですから・・)、それをカバーするためには、債務者の返済能力に応じた調達手段があってしかるべきでしょう。いわば、国債から消費者金融といったところでしょうか。 しかしいずれにしても、業界を根底からくつがえす可能性のある上限金利変更の議論のオピニオンリーダーはこのような方なのです。その人選、そしてこのような論文を許容するメディア、ある種のプロパガンダを感じるのは私だけでしょうか。
by flautebanker
| 2006-07-31 00:26
| business
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アバウト
20代後半に日本の金融機関から外資系投資銀行へ転職。毎日悪戦苦闘しながらディールを追っかけていく日常を徒然なるままに。一流の金融マンへの道は遠く険しい。。。 by flautebanker カレンダー
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